目標管理制度(MBO)の具体的な運用方法を解説

目標管理制度(MBO)とは、組織や企業において、目標を設定し、それを達成するためのプロセスや仕組みのことをいいます。目標管理制度により、組織全体が共通の目標を持ち、それに向けた戦略的な行動を取ることができます。しかし、目標といっても何を基準に設定すべきなのか、もし設定できたとしても社員のやる気を引き出すのがそもそも難しい、など、多くの問題を抱える人事担当の方もいるのではないでしょうか。そこで今回は会社全体にも社員にも効果的な目標管理制度のやり方を解説していきます。

目標設定のやり方

「目標」は部門や業績によって様々であり、例えば営業部門の場合は予算の達成度にかんする事項がほとんどを占める場合があります。しかし他の部門では業務スキルや資格取得を目標にしたりと、人や対象により様々な目標が考えられます。しかしこのように目標が個々人に異なってくることで定期的なモニタリングやフィードバックが難しくなることがあるため、会社全体的な上位目標に関わる目標というものも重要です。では、具体的にどのようなことに注意して目標設定を行うべきなのかを見ていきましょう。

役割の明確化

まず、重要なのが各人に期待される役割を明確にすることです。各人の役割が明確にならなければ、各人に適した目標設定が行えないだけでなく、経営理念に即してそれぞれの立場に応じて果たさなければならないことも言語化されません。そのためにも、特に役職ごとに会社が期待するような内容を明確にし、しっかりと言語化、明文化することが重要です。具体的に考えてみましょう。営業本部の部店長の基本的な使命、つまり経営理念に即して果たすべき役割は、本部の戦略に基づき部の方針や目標、施策を策定し、達成することにあります。そして業績管理、課題管理、人材育成の三つのポイントでより詳細な役割を設定します。特に業績管理については数字として定義することが可能なため、詳細に数値目標を定めることができるでしょう。課題管理については、業務効率を高める人員配置や作業割り当てなどを指します。人材育成に関しては、社員一人一人の適性を鑑みて能力の向上を促進する役割が期待されます。他にも人事部門の部長に期待される基本的な使命は人事施策や人事管理に関する実行を担い、人事課の業務を推進することにあります。そのために求められるより詳細な役割、業績管理、課題管理、人材育成があります。これらの項目についてより詳細に定義化を行います。例えば業績管理の項目で言えば、採用目標や離職防止率、資格取得状況や残業時間の状況など、様々な情報を数値化することができます。定量化できない指標もなるべく厳密に明文化し、社内で齟齬の起きないような記述が期待されます。役職を持たない社員に関しては、役職を持つ上司との面談を通して個々に目標を設定しましょう。役職のある社員は会社内で与えられる役割が明確化できますが、社員はそうとは限らないからです。社員との距離の近い直属の上司自身が自分の役割を達成するために、社員個々人の目標として何が最適なのかを考えましょう。

目標設定の具体的な仕方

目標には会社全体的な目標、つまり経営理念やビジョンと、それに基づいた社員一人一人の目標があります。この二つが明らかに解離しているようでは社員の成長が会社の方針にそぐわなくなり、社員のモチベーション低下や人材流出の危険もあります。まず役職者を含め、経営理念やビジョンに照らし合わせた役割基準を策定し、求められる役割と業績管理、課題管理、人材育成の三つのポイントで行動を明確化します。同時に、経営理念から策定された中期経営計画や年度の計画に照らし合わせて社員の目標案も作成します。そして、目標案から人事考課シートを作成し、社員個々に目標を設定してもらいます。会社から期待される役割を持つ上司と、個々人の目標を持つ社員同士で期待水準をすり合わせることで、達成状況の共有しやすい目標を設定できます。

上位目標との整合性

個人の目標は会社から期待される役割を果たすことを念頭に設定しなければなりません。そのため、部門や上司の目標と整合性が取れていることが望ましいでしょう。特に社員を管理する側の上司は、上で記した役割を持っています。それぞれの役職に与えられる役割が明確になっている状態であるからこそ、管理する社員一人一人の目標を設定できます。

達成水準の明確化

いつ、どのような状態になっているかを明確にしなければ、そもそも評価ができないため、定量化できるものであれば指標や数値で、定性目標であれば時期や達成状態を明確にしておきましょう。

挑戦的な目標設定

目標が、普通に業務をしていれば達成できるレベルでは目標の効果とは程遠いため、本人の役割や能力に鑑みて実力を最大限に発揮できる挑戦的な目標を設定することが望ましいでしょう。それぞれが現状以上の水準の目標を設定することで人材のレベルアップを狙うことができます。当然、達成できないような無理な目標を設定する必要はありません。本人も納得の上で設定される目標である必要があるため上司とのコミュニケーションの深さも問われます。納得して設定した目標に向かってスキルアップや努力を行い達成された際には本人にとっての成功体験となり、頼れる人材に成長することが期待できるでしょう。

上司と社員の面談方法

社員本人の設定する目標が上司の期待水準や上位目標と齟齬があってはいけないため、目標設定面談を通して認識をすり合わせる必要があります。例えば、人事考課シートに記載した目標、達成水準が達成困難だったり曖昧な場合は上司の期待水準を本人に伝え、目標を適切なものに確定させることが重要です。もし毎年同じ業務を担当することが多い部門についても、業務範囲の拡大や難易度の高い業務への挑戦なども上司が社員の状況を鑑みて提示できるものがあると考えられます。同じ業務を繰り返させるのではなく、社員の成長を考慮した目標設定を意識しましょう。

では、具体的になにについて意識すればスムーズな面談が行えるのでしょうか。

目標ごとの達成水準のゴールイメージ共有

達成水準の設定について、考課の時に達成と判断できる状態はどのような状態なのかを明確にする必要があります。そのため、上司と社員本人が異なるゴールイメージを持ってはいけません。そのために目標のすり合わせが必要ですが、目標のすり合わせに当たって、本人の目標達成への意欲が損なわれないように注意しなければいけません。上司の期待の押しつけではなく、あくまでも社員本人の自発的な意欲に基づく目標であるということを意識しましょう。自分で設定した目標の達成に向けて意欲的に努力を行うことが人材育成に効果的なのです。

達成水準を実現する方法

目標は、達成されることが可能であるか、という観点が必要です。達成不可能な目標を設定し、いくら努力しても目標が達成されないようであれば社員のモチベーションが低下してしまいます。自発的な目標設定にするためにも、目標達成の手段やスケジュールの具体化について話し合い、行動計画を明確にしましょう。その過程で非現実的な目標でないかを確認することもできます。行動計画については、実現可能な方法か、スケージュール的に現実的か、関係者の協力が得られるか、その他、障害になりそうな可能性はないか、など、目標達成に向けた行程を明らかにすることで、社員の主体性を引き出しましょう。

達成方法の実行の仕方を共有

設定された目標は、達成方法を実行することではじめて達成されます。本人の能力や意思を確認しながら実行にむけた支援も必要です。上司は、実行のタイミング、助言、関係者との調整、障害の低減など、社員の自己実現に向け最低限の支援を行うことも求められます。