近年、少子高齢化が深刻な状況となり、生産年齢人口も減少してきています。この影響は採用市場にも広がっており、大卒、中途の採用難が激化していくことが予想されます。そこで現在注目されているのが「高卒採用」です。高卒採用求人数は約50万人、10年前に比べて倍以上の数で推移しています。この記事では採用に困る担当者の方向けに高卒採用市場について解説していき、高卒求人者にどのようにアピールしていくべきなのかをお教えします。
高卒採用のメリットについて
採用単価が低く、かつ大卒の中小企業求職者の求人倍率より低いという現状があります。そのため、企業にとってはコストを抑えた採用活動が行えます。また、高卒求人者は複数エントリーを行うことが少ないため、内定辞退の心配がほとんどありません。そのため、選考を行う人材数を抑えることもでき、採用業務にあてる時間も大幅に短縮できます
日本の少子高齢化の影響により生産年齢人口の減少は避けられません。しかし、大卒や中途の採用難によって労働力を確保するのが難しい企業も多いでしょう。そこで、成長過程にある高卒採用市場に乗り出すことで人材不足の解消が期待されます。
高卒は大卒より4年も早く採用できます。その分スキルも向上し若いうちから会社を任せられる人材に育つことが期待できます。若い貴重な時間を会社での教育に当てることができるため、会社にとっての長期的な戦力に育てることができるのです。
高卒採用の現状について
実は高校生の就職希望者は減少傾向にありますが、令和4年3月末現在における内定率は99.2%で前年同期より0.1ポイント増加しています。高校新卒者に占める就職者割合は、長期的に減少傾向で推移しており、とくに平成22年は世界的な金融危機の影響などにより15.8%と大きく減少しましたが、23年以降は増加しています。また令和2年3月の就職率は98.1%と、ここ数年、高水準を維持しています。厚生労働省の資料においても、令和2年3月末の高校卒業者に対する求人倍率は3.29倍と、ここ数年上昇傾向を継続しています。求人数は約48万4千人で前年比約1.5%増加しています。
- 就職内定率 99.2% (前年同期比0.1ポイントの上昇)
- 就職内定者数 約13万4,000人(同7.9%の減)
- 求人数 約39万人 (同0.9%の増)
- 求職者数 約13万5,000人(同8.0%の減)
- 求人倍率 2.89倍(同0.25ポイントの上昇)
- 令和4年7月の有効求人倍率は1.29倍
- 令和4年7月の新規求人倍率は2.40倍
このように、高卒の求人倍率は一般の求人倍率に比べて高く、採用活動が活発に行われていることがわかります。そのため高卒採用をするにあたって、他社と差別化するために採用戦略を練ることが重要になってきます。
それでは次に、高卒採用市場における課題点を見ていきましょう。
高卒の方の声
このように、高卒採用市場における課題点として、学校斡旋によって選考を受ける会社が限定されてしまうことや、入社後のミスマッチなどが挙げられるでしょう。この課題点を解消する採用戦略を行うことで、高卒採用市場の中で他社との差別化が図れるのではないでしょうか。実際に、高卒の就職希望者は売り手市場になっているのが現状ではあるものの、厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率」を見ると3年以内の高卒人材の離職率が36.9%と、3人に1人以上の割合で退職をしています。
その理由の一つとして「求人企業と高卒の就職希望者とのミスマッチ」が考えられます。大卒の採用市場と異なり、高卒採用のメディアやプラットフォームは整備されておらず、今でも求人票での求人募集に限られるケースもあります。そのため企業をよく知れる機会が少なく、入社後のミスマッチが起こりやすいのが現状です。また、厚生労働省の「令和2年転職者実態調査の概況」によると、自己都合による離職理由の中で最も大きな割合を占めるのが「労働条件が合わない」であり、これも入社前に職場の労働環境を知ることができる機会の少なさが原因となっているでしょう。求人企業のことをテキストベースだけでなく、写真や画像等クリエイティブを上手に使い、視覚的に訴えかけることが必要であり、そのことで高校生自身が入社してからの人生や働き方を上手くイメージする機会を与えてあげることが重要になるのです。
では次に、高卒採用のルールを理解し、上記の課題点を解決する方法を見ていきましょう。
高卒採用ルール
一人一社制とは、高校生一人が応募できる企業数が一社のみに限られるという制度です。そのため、面接を受けた企業にそのまま就職するというケースがほとんどになります。この制度の問題点として、早期離職が多いことが挙げられます。理由として、他の企業を受けられないことで他社との比較ができない点、就職する企業についてよく知らないまま入社できてしまう点などが挙げられます。
東京商工会議所の調査によると、5割前後の新入社員が「仕事と私生活とのバランスが取れるか(55.4%)」、「上司・先輩・同僚とうまく やっていけるか(51.4%)」、「仕事が自分に合っているか(49.7%)」を不安に感じる要素としてあげている。こうした不安なポイントを入社前に解決することが入社後のミスマッチを防ぐカギになりそうです。
また、同調査では入社する会社に魅力を感じる点として、「年次有給休暇取得の推進(42.5%)」、「時差出勤・フレックスタイム制勤務(41.9%)」、「テレワー ク(在宅勤務)(36.1%)」などの働き方に関する選択肢が上位となった。 ・「資格(検定)等の取得支援(39.8%)」、「人材育成体系(研修)の充実(38.8%)」などが挙げられており、会社における働き方、スキルアップの環境が整備されているかどうかなど、入社後のイメージ像がなるべく明確になるような情報を訴求するのが良いでしょう。
なぜ高卒就活生が自己開拓を行うのでしょうか。考えられる理由の一つに、一人一社制を避けていることが挙げられます。一人一社制は、学校の斡旋により就職先が決まりやすいというメリットもありますが、他の企業と比較することが困難です。そのため、自分で自分に合う企業を探す就活生が増えているのでしょう。GUやアイリスオーヤマなどの有名企業も高卒採用専用のHPを制作しており、自己開拓就活生に向けた採用戦略に乗り出していることがわかります。以下に自己開拓を行う就活生へのアプローチ方法を挙げました。
- 企業情報を具体的に提示する
「マッチング」が重視される自己開拓。企業の風土や理念、社風を明確にして、最適な人材を定義するのが良いでしょう。例えばGUの高卒採用ページには「求める人材」を明確に記しています。また、社内で歩めるキャリアが具体的に明記されていたり、給与や異動、業務スケジュールなども掲載されています。多くの情報を載せることで具体的に企業で働くイメージを持たせることができ、入社後のマッチングミスを防ぐことができるでしょう。
- 高卒専用ナビサイトへの掲載
ジョブドラフトという高卒就活生専門の求人サイトがあります。サポート体制も整備され、学校との連携も取れているため、高卒採用に乗り出す企業にとっては掲載しやすいメディアでしょう。また、ジョブドラフトを運営する株式会社ジンジブでは、「高卒採用Lab」という高卒採用に特化した企業人事担当向けメディアを運営しています。高卒採用市場についての理解を深めたい際には是非ご活用ください。
採用後の流れについて
今まで述べてきたように、入社前から学生に向けて積極的に情報発信を行うことができれば、入社後のミスマッチを防ぐことができるでしょう。例えばインターンシップやSNSの活用など、学生とのコミュニケーションを重視する企業は採用後の人材の定着にも効果が期待できます。では採用後、新入社員となった学生たちをどのように迎え入れるのが良いのでしょうか。
当然ですが、大学生に比べ社会経験が圧倒的に少ない分、社会人としての基本的なスキルが未成熟な場合があります。例えばビジネスマナーや言葉遣い、PCスキルなど、大学に通えばある程度学べる要素が未完成な部分が多いです。だからこそ、社会人としての基本を丁寧に教えてあげることが重要です。大卒に比べ人生経験が少ない分、足りないところがあるのは当然ですので、愛を持って接してあげましょう。3年以内に離職した高卒就職者のうち約半数は入社一年以内に退職しています。加えて、早期離職者の約半数が人間関係を理由に退職しています。このことからわかるように、入社直後の人間関係はその後企業に定着するかに深く関わってくる要素になります。よって、入社直後の研修の段階から、新入社員にとって安心できる職場環境を用意し、暖かく迎え入れる準備が大事です。