従業員の健康、守れてますか?中小企業のヘルスケアの実態について解説

記事のサマリー(要約)
厚生労働省が実施した「中小企業における健康経営に関する認知度調査」によると、中小企業で健康経営に取り組んでいる割合は約2割であり、約7割が取り組んでいないと回答しています。また、取り組んでいない理由として最も多かったのは「人手不足や時間不足で取り組めない」というものでした。さらに、中小企業では従業員の健康状態や生活習慣に関するデータが不足していることも課題です。これらの課題を解決するためには、中小企業が健康経営を促進する具体的な施策を実施する必要があります。例えば、健康経営優良法人認定制度への申請、従業員の健康状態や生活習慣に関するデータの収集と分析、従業員の健康増進や生活習慣改善に関する事業の実施などが挙げられます。

従業員のヘルスケアとは、従業員の健康状態や生活習慣を把握し、適切な支援や指導を行うことで、従業員の健康を保持・増進することを指します。従業員のヘルスケアは従業員自身の健康や幸福感だけでなく、企業の生産性や競争力にも大きく影響します。実際、従業員のヘルスケアに積極的に取り組む企業は、従業員の離職率や欠勤率が低く、売上高や利益率が高いという研究結果もあるくらいです。
では、どのように従業員のヘルスケアに取り組めばよいでしょうか?まずは、現状把握が重要です。中小企業の従業員のヘルスケアの現状と実態から浮き彫りになる課題点を見てみましょう。

中小企業の従業員のヘルスケアの現状と課題

厚生労働省が実施した「中小企業における健康経営に関する認知度調査」によると、中小企業で健康経営に取り組んでいる割合は約2割であり、約7割が取り組んでいないと回答しています。また、取り組んでいない理由として最も多かったのは「人手不足や時間不足で取り組めない」というものでした。これは、中小企業が人事担当者や健康管理者を専任で置けない場合が多く、人事管理や健康管理に対する負担が大きいことを示しています。
さらに、中小企業では従業員の健康状態や生活習慣に関するデータが不足していることも課題です。厚生労働省が実施した「中小企業等におけるストレスチェック制度等実施状況調査」によると、中小企業でストレスチェック制度を実施している割合は約5割であり、実施していない割合は約4割です。また、実施している中小企業でも、ストレスチェックを受診した従業員の割合は約6割であり、受診しなかった理由として最も多かったのは「受診する必要性を感じなかった」というものでした。これは、中小企業では従業員自身が自分の健康状態やストレスレベルを正しく把握していない可能性が高いことを示しています。
このように、中小企業では従業員のヘルスケアに対する意識や取り組みが不十分であり、従業員の健康状態や生活習慣に関するデータが不足していることが課題となっています。これらの課題を解決するためには、中小企業が健康経営を促進する具体的な施策を実施する必要があります。

中小企業の健康経営を促進する具体的な施策

健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。健康経営に取り組むことで、従業員の健康やモチベーションを高めるとともに、企業の生産性やブランドイメージを向上させることができます。中小企業が健康経営を促進するためには、以下のような具体的な施策を実施することが有効です。

1. 健康経営優良法人認定制度への申請

健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が主催し、日本経済新聞社が運営する制度で、優良な健康経営に取り組む法人を認定し、社会的に評価することを目的としています。健康経営優良法人認定制度には、大規模法人部門と中小規模法人部門があり、中小企業は中小規模法人部門への申請が可能です。中小規模法人部門では、以下の5つの項目について自己申告書を提出し、審査委員会による審査を受けます。

健康経営優良法人認定制度への申請には、以下のようなメリットがあります。

  • 認定されることで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価されることができます。
  • 認定されることで、日本経済新聞社や各種メディアで紹介されることがあり、企業のブランドイメージや知名度を高めることができます。
  • 認定されることで、各種セミナーや勉強会などに参加する機会が増えます。これにより、他の優良な健康経営法人と情報交換やネットワークづくりを行うことが期待できます。例えば、健康経営優良法人認定制度と連携した「健康経営優良法人認定制度特別枠」では、中小企業が健康経営に関するコンサルティングや研修などを受ける際に、最大50万円の補助金を受けることができます。また、健康経営優良法人認定制度と連携した「健康経営優良法人認定制度特別枠」では、中小企業が従業員の健康診断やストレスチェックなどを実施する際に、最大10万円の補助金を受けることができます。さらに、健康経営優良法人認定制度と連携した「健康経営優良法人認定制度特別枠」では、中小企業が従業員の健康増進や生活習慣改善などに関する事業を実施する際に、最大30万円の補助金を受けることができます。これらの支援制度や優遇措置は、中小企業が健康経営に取り組む際の費用負担や財政的な負担を軽減することができます。

このように、健康経営優良法人認定制度への申請は、中小企業が健康経営に取り組む際のメリットが多くあります。自社の取り組みの一環として検討してみるのも良いでしょう。

2. 従業員の健康状態や生活習慣に関するデータの収集と分析

従業員のヘルスケアに取り組むためには、従業員の健康状態や生活習慣に関するデータを収集し、分析することが必要です。データを収集する方法を紹介しましょう

  • 健康診断: 従業員の身体的な健康状態を測定するために、年1回以上の健康診断を実施します。健康診断では、血圧や血糖値、コレステロール値などの生活習慣病のリスク因子や、肝機能や腎機能などの臓器機能などをチェックします。また、肺活量や握力などの身体能力も測定します。
  • ストレスチェック: 従業員の精神的な健康状態を測定するために、年1回以上のストレスチェックを実施します。ストレスチェックでは、従業員が自己評価するアンケートにより、ストレスの原因や症状、対処法などを把握します。また、医師や保健師などの専門家による面談や相談も行います。
  • アクティビティトラッカー: 従業員の生活習慣を測定するために、歩数計や心拍計などのアクティビティトラッカーを利用します。アクティビティトラッカーでは、従業員の歩数や消費カロリー、睡眠時間などを記録し、スマートフォンやパソコンで確認できます。

これらのデータを収集することで、従業員の健康状態や生活習慣に関する客観的な指標を得ることができます。また、データを分析することで、従業員の健康状態や生活習慣に関する傾向や問題点を把握することができます。例えば、健康診断の結果からは、従業員の生活習慣病のリスクや身体能力の低下などを見つけることができます。ストレスチェックの結果からは、従業員のストレスの原因や症状、対処法などを見つけることができます。アクティビティトラッカーの結果からは、従業員の運動量や睡眠時間などを見つけることができます。
これらのデータを用いることで、従業員のヘルスケアに必要な支援や指導を行うことができます。例えば健康診断の結果からは、従業員に食事や運動などの生活習慣改善のアドバイスや指導、ストレスチェックの結果からは、従業員にストレス管理やメンタルヘルスケアなどのアドバイスや指導を行うことができます。アクティビティトラッカーの結果からは、従業員に歩数目標や睡眠目標などの設定や達成を促すことができます。
以上のように、従業員の健康状態や生活習慣に関するデータを収集し分析することは、中小企業が従業員のヘルスケアに取り組む際の有効な施策です。

3. 従業員の健康増進や生活習慣改善に関する事業の実施

従業員のヘルスケアに取り組むためには、従業員の健康増進や生活習慣改善に関する事業を実施することが必要です。事業を実施する方法としては、以下のようなものがあります。

  • 健康教育: 従業員に健康に関する知識やスキルを提供するために、健康教育を実施します。健康教育では、食事や運動、ストレス管理、メンタルヘルスケアなどのテーマに沿って、講義やワークショップなどの形式で、従業員に情報やアドバイスを提供します。また、従業員同士の交流や意見交換も行います。
  • 健康支援: 従業員に健康増進や生活習慣改善の機会や環境を提供するために、健康支援を実施します。健康支援では、歩数コンテストやウォーキングイベントなどの運動促進プログラムや、フルーツやサラダなどの健康食品の提供や割引などの食事支援プログラムなどを実施します。また、禁煙支援やアルコール対策などの依存症予防プログラムも実施します。
  • 健康相談: 従業員に健康に関する個別的な相談やカウンセリングを提供するために、健康相談を実施します。健康相談では、医師や保健師などの専門家が従業員の健康診断やストレスチェックの結果に基づいて、従業員に適切な指導やアドバイスを行います。また、従業員が自ら相談したい場合も受け付けます。

これらの事業を実施することで、従業員の健康増進や生活習慣改善に対する意識やモチベーションを高めることができます。また、従業員の健康状態や生活習慣に応じた個別的な支援や指導を行うことができます。さらに、従業員同士のコミュニケーションやチームワークも向上させることができます。
以上のように、従業員の健康増進や生活習慣改善に関する事業を実施することは、中小企業が従業員のヘルスケアに取り組む際の有効な施策です。事業実施に関する方法や事例などの詳細は、[中小企業基盤整備機構のウェブサイト]をご覧ください。

従業員のヘルスケアは、従業員自身の健康や幸福感だけでなく、企業の生産性や競争力にも大きく影響します。中小企業は、健康経営優良法人認定制度への申請、従業員の健康状態や生活習慣に関するデータの収集と分析、従業員の健康増進や生活習慣改善に関する事業の実施などの具体的な施策を実施することで、従業員のヘルスケアに取り組むことができます。ぜひ、参考にしてみてください。